しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年12月2日(月)

守れ保険証

きょう新規発行停止

崩れかねない国民皆保険

伊藤岳参院議員に聞く

写真

 石破政権は2日、現行保険証の新規発行を停止し、「マイナ保険証」への一本化を強行します(現行保険証は最大1年間有効)。日本共産党の伊藤岳参院議員に「マイナ保険証」のゴリ押しや、保険証の新規発行停止の問題点と今後の課題を聞きました。(森糸信)

不具合はさらに

 ―多くの国民が不安を感じています。

 「マイナ保険証」の利用率は10月時点で15・67%にとどまっています。「マイナ保険証」で大丈夫なのか、安心して医療が受けられてきた保険証が使えなくなるのではないかという不安が広がっています。これまで黙っていても保険証が届いて、何ら不便も問題もなかったのに、その保険証の新規発行がなくなれば、国民皆保険制度の根幹が崩れかねません。政府の責任は重大です。

 政府が主張してきた「マイナ保険証」のメリットはすでに破たんしています。“特定健診の情報が医療機関に共有される”と言いますが、かかりつけ医ならカルテで必要な情報は得られます。救急搬送の場合、「マイナ保険証」があっても改めて検査・診断する必要があります。“重複投薬が避けられる”と言いますが、「マイナ保険証」で新しい処方履歴が送られてくるには1カ月程度要します。おくすり手帳で十分です。

 さらに“医療現場で働く人の負担を軽減できる”とも言いますが、トラブルや不具合の対応に時間を割かれ、かえって大変な負担が生じています。医療現場からは「現場で感じるメリットはない」との厳しい声が出ています。

 一方で、「マイナ保険証」には大きなリスクがあります。マイナンバーのひも付けの誤りは最も深刻な問題です。マイナンバーカードに被保険者の保険情報をひも付ける作業には住所情報の照会、ひも付けで多数が不一致となり、個人が特定されず、誤登録が避けられないといった構造的な欠陥があります。政府の総点検でも誤登録は解消されておらず、今後もひも付けのトラブルや不具合はさらに広がらざるを得ないのです。

数の力通用せず

 ―保険証は存続できるのですか。

 新規発行が停止となっても2日以降、すぐに現行の保険証が使えなくなるわけではありません。国民的な運動と政府の姿勢をただす時間はあるのです。自公が過半数割れして、数の力で押しとおす政治は通用しなくなりました。国会が本当に面白くなっています。健康保険証の存続を求める国民の運動、国会での論戦を強め、力をあわせて石破政権に健康保険証の存続を迫っていきたいと思います。

狙いは財界の大もうけ

無保険状態 避けられず

 ―河野太郎前デジタル担当相は会見などで「イデオロギー的に反対する人がいる」などと繰り返しました。

 そういう問題ではなく、マイナンバー制度と「マイナ保険証」が抱える根本的な欠陥に国民の不信が向けられているのです。

 政府が推進する「マイナ保険証」を利用した医療DX(デジタル化)はこうした欠陥を根本からただすことなく、見切り発車しているのが現状です。

 そもそもマイナンバーカードと保険証は別物なのに、無理やり保険情報をひも付けようとするからトラブルが起きるのです。紛失・盗難などによる個人情報漏えいの対策も万全ではありません。

任意なのに強要

 ―政府が「マイナ保険証」への一本化や保険証の廃止を強行する理由はなんですか。

 「マイナ保険証」への一本化は、国民の医療情報を利活用して、ビッグビジネスを生み出し、財界・大企業の大もうけのタネにするためです。

 財界は「医療分野においてビッグデータの活用は非常に価値がある」(経団連)と、医療分野の個人情報のビジネス利用で利益の拡大を狙ってきました。さらに「一連のトラブルは問題ではあるが、マイナンバー制度の推進を止めることは絶対にあってはならない」(経済同友会)とも語ってきました。こうした財界のもくろみと、国民の所得、資産、社会保障給付をマイナンバーにひも付けることで把握し、税の負担を増やそう、社会保障の給付は削ろうという政府の思惑が重なりました。

 「マイナ保険証」を全国民が持たなければ、国民の情報を集約・把握はできません。だから、マイナンバーカードの取得は「任意」なのに、事実上強要しようとしているのです。

容易に申告漏れ

 ―政府は「資格情報のお知らせ」や「資格確認書」などがあるから大丈夫としています。

 私は国会論戦で一貫して無保険状態が生まれることは避けられないと、何度も追及してきました。

 特に要介護高齢者と重い障害を持っている方々のことなど最初から考えていない制度設計です。全国保険医団体連合会(保団連)の調査では、高齢者施設などの利用者・入所者本人がマイナンバーカード(マイナ保険証)を申請できない場合に「施設側がマイナンバーカードの代理申請を対応できる」と回答した施設はわずか6・5%にすぎません。施設職員が個人情報であるカードの暗証番号を管理できないからです。政府は暗証番号が必要ない顔認証マイナンバーカードの発行を開始しましたが、結局、施設職員が代理交付に出向かなければ取得できません。施設側が対応できないと「無保険状態」となりかねません。

 このことは国民全体にも言えることです。5年ごとのマイナンバーカードの電子証明書の更新を忘れてしまい、相当数の申請漏れが発生することは容易に想像できます。マイナポイントがもらえるからと「マイナ保険証」をつくった人は、期限に気づかず申請漏れになりやすいのです。申請漏れにより医療機関でいったん10割負担となる事例が実際に起きています。例えば、「コロナ陽性疑い」で受診すれば1万9167円もの窓口負担になります。

 医療機関のカードリーダーで資格確認エラーが発生した場合などのトラブルの回避策として、政府は「資格情報のお知らせ」を交付しています。ところが、自宅に届いても「何かわからず捨てた」という人が多いのです。こうしたことも混乱につながっています。

 ―結局、保険証を存続するのが一番の解決策ですね。

 その通りです。政府は「マイナ保険証」に登録していない人には資格確認書を交付するとしています。しかし、初回は申請なしで交付されても、現行の保険証のように申請なしでも必ず届けられるとは、政府はまだ明言していません。資格確認書は1~5年の更新期限に更新手続きをしなければ無保険状態になります。やはり、安心してこれまでと同じように医療を受け続けるには、現行の保険証を残すしかありません。


pageup