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2024年12月2日(月)

笹子トンネル事故

中日本高速 調査ずさん

関係部署聞き取りせず

 中央自動車道の笹子トンネル(山梨県)の天井板が崩落し9人が死亡した事故(2012年12月2日)の直後に中日本高速道路が行った社内調査で、同トンネルの保全・管理に関わる部署や関連会社に聞き取りをしていなかったことが1日、わかりました。事故から12年を前に、同社がずさんな調査の実態を遺族に明らかにしました。(矢野昌弘)


写真

(写真)玲さんの写真が飾られた自宅で語る邦夫さんと和代さん=兵庫県芦屋市

 中日本は事故から約2カ月後の13年1月30日に「安全性向上に向けた取組み」という11ページの文書を出しました。

 このうち、事故原因にふれるのはわずか2ページほどしかありません。しかも「『安全が何よりも優先する』という当然のことが日常性の中に埋没し」などと、抽象的な言葉が並びます。事故直前に予定していた詳細な点検を簡素化した理由の記述はありません。

 事故で犠牲となった松本玲さん=当時(28)=と友人4人の遺族にとって、同文書は納得できるものではありません。当初から文書の基となった社内調査の内容を明らかにするよう求めていました。

 中日本は先月22日、玲さんの父、松本邦夫さん(73)と母、松本和代さん(73)に説明文書を手渡しました。

 同文書は、社内調査の対象は、本社や東京支社など、笹子トンネルと直接の関わりがない部署や関連会社だったと述べています。

 同トンネルを管理する中日本の八王子支社や、関連会社の中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京などについては「警察の捜査や(中略、国土交通省の)『調査・検討委員会』による調査の支障となることから、意見照会は行っていない」としています。

 和代さんは「普通の企業なら事実の検証をするのが当然で、外部からの調査があるにしても社員に聞き取りをするものだと思う。中日本が、どんなに素晴らしい“安全対策”を掲げても、事故の原因・事実を把握せずにいるのは本末転倒のように思う」と話します。

 本紙の取材に、中日本は松本夫妻に渡した文書内容は「事実です」と回答しました。

捜査理由ならず

 企業のコンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士の話

 関係する部署や社員への聞き取りは、捜査の支障にならない範囲でやればいいだけだ。最初から聞き取りをしなかったことは問題だし、刑事事件の捜査が決着した段階で実施してもいいのに、それすらしていない。「調査の支障」は何の言い訳にもならない。社内調査は、同様の事故を二度と繰り返さないためにある。たとえ警察の捜査や国交省の調査と内容や結果が重なっても、調査を躊躇(ちゅうちょ)する必要はない。


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