2024年11月30日(土)
きょうの潮流
まず改むべきは政治であり、政府であるとの見地から、政府部内を戒めるとともに、国民がはっきりと希望を持ち得る政治を行いたい―。自民党初の総裁選で首相となった石橋湛山(たんざん)の施政方針演説です▼戦前、言論人として小日本主義を主張し、植民地政策や戦争に異論を唱えた湛山が自民党のトップになったことは内外に衝撃を与えたといいます。しかし病に倒れ、わずか65日で首相退任。施政方針も岸信介による代読でした▼それを石破首相が所信表明演説で引用しました。「国政の大本について常時率直に意見をかわす慣行をつくり、おのおのの立場を明らかにしつつ、力を合わせるべきことについては相互に協力を惜しまず…」。各党派との真摯(しんし)な政策協議は民主主義のあるべき姿だと▼少数与党の国会が始まりました。数の横暴で多くの願いや声を無視し続けてきた自公による強権政治からの転換。そして、国民の要求に応える政治へ。それこそが総選挙で示した民意です▼共産党は、政治改革の要となる企業・団体献金の全面禁止、思想・信条や政党支持の自由を侵す政党助成金を廃止する法案を提出。学費値上げの中止要請をはじめ、生活や人権を守るための施策を次々と政府に求めています▼石破首相が「今の日本政治に対する重要な示唆がある」とたたえる湛山は「国民とともにある明るい政治を築くようにしたい」と施政方針を締めくくりました。それをどう実現していくのか。民意に背を向けた所信表明からは見えてきません。