2024年11月29日(金)
きょうの潮流
学生街としても知られる福岡市・西新(にしじん)。駅から程近い西南学院大の館内には貴重な歴史遺産が展示されています。鎌倉時代、蒙古(もうこ)襲来に備えた元寇(げんこう)防塁です▼1号館の新築にあたって出土した東西20メートルの土塁の一部を復元しました。当時、西の今津から東の香椎(かしい)浜まで、およそ20キロにわたって築かれたという元寇防塁。ほぼ中間にあたる西新にはその遺構が国の史跡として保存されています▼時は8代目執権、北条時宗の政務が始動した頃。世上が乱れるなかで元軍来たるの報は国を揺るがしました。九州各地の御家人が海岸線に築いた防塁は再びの襲来に備えてのものでした▼今年は最初の文永の役から750年。先週末には西新で「蒙古襲来絵詞(えことば)展」が開催されるなど各地で企画展やイベントが催されています。2度目の弘安の役の際に暴風雨によって沈んだとされる元軍の船も先月、長崎・松浦市沖の調査で新たに確認されました。見つかったのは伊万里湾にある「鷹島海底遺跡」。今回で3隻目の発見です▼他国による初めての本格的な侵攻は、どんな影響をもたらしたのか。史実の掘り起こしは今も続いています。その後、歴史はめぐり、今度は日本が他国を侵略する側へと▼西南学院は8年前の創立百周年にあたって、アジア・太平洋戦争に加担した責任を直視し、平和宣言を表明しています。「自国本位の価値観を絶対視し、武力・暴力の行使によって人々の尊厳を抑圧するという過ちを二度と繰り返すことのないよう―」行動すると。