1997年9月19日「しんぶん赤旗」

日本共産党の政治資金

企業・団体献金とも政党助成金ともいっさい無縁

上田均財務・業務局長にきく


 9月19日付の官報で公表された96年政治資金収支報告について、日本共産党の上田均財 務・業務局長に聞きました。


 ――毎年、日本共産党が第1位と報道されています。日本共産党の政治資金の規模、内容と特徴はどういうものでしょうか。

 上田 たしかに、ここ10数年来、日本共産党の政治資金収支報告は他の党をしのいで、第1位になっています。その理由は、毎年のことですが、わが党の場合、日刊、週刊の「しんぶん赤旗」(機関紙)、雑誌、書籍・パンフなどの事業収入―一般にいう「売り上げ」―が、他のどの党よりも多く、またその事業経費―用紙、印刷、輸送、編集などの諸経費―が、収入の7割以上を占めるということにあります。制約なしに使える活動資金を「純収入」としますと、日本共産党の場合は総収入の27%の82億円です。これにたいして自民党は244億円、新進党は122億円となります。(グラフ参照)

 政治資金が「第1位」ということは、自治省が政治資金収支報告書を公表するにあたって、このような性格のちがう収入を同列において公表するためであり、一般マスコミもそのように報道するため誤解を与えています。

 日本共産党の政治資金は、党を構成している党員の党費、「しんぶん赤旗」をはじめとする事業収入、党の政策、活動に理解と共感を寄せる広範な人々の個人寄付という、三つの収入から成り立っています。もうご存じのように企業・団体からの献金、国民の税金を山分けする政党助成金は一切ありません。

 昨年の日本共産党の収支報告書の特徴は、一昨年と比べて収入が2・2%程減り、支出は0・7%減って、収支はほぼトントンでした。収入では党費や募金が伸びましたが、主に事業収入が前年比で若干減りました。総選挙の躍進後、機関紙誌が伸びてきましたので、ことしは次第に回復しつつあります。

小選挙区制のもとで国民からの供託金募金 9億円に

 総選挙の年であった昨年の募金運動は、「小選挙区制に反対し、日本の民主主義を守るための募金」として9億円にのぼる供託金募金が寄せられました。この場をかりて全国のみなさんに心からお礼申し上げます。中央に寄せられたものはこの報告書に含まれていますが、大部分は地方党機関の収入に含まれ、都道府県の選管から公表されます。

 中央委員会の場合は、発行部数250万部におよぶ「しんぶん赤旗」など機関紙誌の発行元として、機関紙誌等の事業活動の収入と支出が圧倒的に大きい比重をしめています。これは、機関紙中心に国民とむすびついて活動するという、他党にはない近代的組織政党としての特徴を反映するものです。

 具体的には、中央委員会の収入の88・9%、支出の72・9%が機関紙誌等の事業によるものです。支出全体も昨年は、「金のかかる小選挙区制」選挙のはじめての年であったにもかかわらず、諸経費全体でもいっそうの倹約につとめ、前年比98%に抑えたことも特徴でした。政治資金の収支規模の大きいことから「日本共産党」は「金持ち」という宣伝もされていますが、これは当たりません。

 自民党の塚原俊平組織本部長(当時)は“共産党に負けじ”と、こんご、地方議員に対しても「資料をしっかり作って届ける」「それにはやっぱりお金が必要で、財界には献金をぜひ」(『プレジデント』9月号)といっています。財界の献金でつくるこういう「資料」では、財界批判ができないのは当然でしょう。日本共産党は、地方議員に届ける資料は党費収入から出費し、パンフや雑誌なら有料で届けるようにしています。わが党の政治資金報告書は、党の清潔さ、政党のあり方を示していると思います。(表1)

表1 日本共産党の政治資金収支報告概要(1996年分)

項  目
金  額
前年比
構成比
(1)収入 万円
党  費
13億8,913 103.5 4.6
寄  付
5億6,653 115.8 1.9
機関紙・誌書籍
270億4,304 97.3 88.9
その他
14億0,620 95.2 4.6
収 入 合 計
304億0,497
97.8 100.0
(2)支出
経常経費
47億9,666 106.3 15.8
機関紙・誌書籍
221億7,177 99.6 72.9
その他の支出
34億5,384 89.4 11.3
支出合計
304億2,227 99.3 100.0
収支差引〔(1)−(2)〕 −1,730
前年からの繰越金 69億4,039
翌年への繰越金 69億2,309

収支の圧倒的部分は機関紙誌などの事業収入

 ――自民党などの収支報告書にはどのような特徴や問題点が見られるでしょうか。

 上田 大きな特徴は、各党の収入にしめる政党助成金の比重がきわめて高いことです。自民党は党本部の収入(借入金を除く。以下同じ)の55%、新進党は80%、民主党は38%、社民党は55%、さきがけは64%が政党助成金です。政党助成金は、発足当初、国民の批判をかわすために、その政党自身が前の年に集めたその政党の収入(本部と支部)の3分の2という上限をきめていましたが、この3分の2条項はたった1年だけで撤廃され、収入を政党助成金だけに依存する「税金丸がかえ政党」をつくることも可能になりました。また、政党助成金制度は公明もふくめて“新党”ばやりの離合集散で、みにくいもめごとの誘因ともなっています。

 自民、新進、社民、さきがけが昨年うけとった政党助成金は、政党本部が集めた金額より上まわっています。いわば実質「税金にかかえられた政党」という状況がますます顕著になっています。また、自民、新進、さきがけの政党助成金以外の収入の大きな部分は相変わらず企業・団体献金です。

75年の歴史のなか、国民に支えられて築いてきた近代的組織政党の資産

 ――日本共産党の資産報告と他の党の資産報告との差があまりにも大きすぎると感じますが?

 上田 日本共産党の資産は、全国津々浦々に組織され日常ふだんに国民の中で活動している2万数千の日本共産党の支部および全国の47都道府県委員会、3百数十地区委員会を指導する中央委員会の機構と活動をささえ、また250万を超える読者をもつ「しんぶん赤旗」をはじめとする機関紙誌の編集、発行をささえるうえで必要な資産です。ここには、日本共産党の活動のいっそうの発展を期待しての少なくない寄贈物件もあります。これは75年の歴史のなかで全党の努力と、広範な国民にささえられて築きあげてきた近代的組織政党として当然の資産の範囲です。(表2)

表2 資産報告の内訳

項  目
件 数
金 額(万円)
土  地
58
22億6,380
建   物
52
17億6,616
地上権または借地権
3,185
取得価格が百万円超の動産
42
4億5,098
預・貯金残高

59億1,775
金 銭 信 託


有 価 証 券
14 3億9,690
出 資 金


残高百万円超の貸付金 6億4,500
百万円超の敷金
8億8,257
百万円超の施設利用権
1,800
残高百万円超の借入金


 他党の場合、一部国有地の利用や別法人にしていますが、自民党を含めて報告した資産を全部あわせても、日本共産党よりはるかに少ないことは信じられないことです。本当だとすると、それらの党が、文字どおり企業や業界団体、宗教団体、労組などに活動も資金も依存していることの証明ですし、機関紙誌活動をはじめ、本来あるべき政党としての独自活動が弱いことを反映しているものといえます。また、「オール与党」体制のもとでの「離合集散つねならず」という政党状況の反映でもあります。

政治資金は国民の中での活動通じみずからの努力でつくるべきもの

 ――政党の政治資金は本来どのようにあるべきだと考えますか。

 上田 昨年の総選挙で、日本共産党は300の小選挙区での立候補者の供託金9億円を、日本の民主主義を守る募金として国民に訴え、すべて広範な人たちの個人募金によってまかなうことができました。自民党、新進党など「日本の国民には個人献金の習慣がないから」という口実で企業献金や政党助成金にしがみつく政党は、政治資金面でもますます国民不在の様相を深め、政党としていっそう堕落の道をたどっています。政党の政治資金は、日常ふだんの国民の中での活動を通じて、みずからの努力で作るべきものです。

 住専問題と銀行献金、薬害や高薬価問題と製薬業界からの献金や、利益誘導政治に拍車をかける公共事業問題とゼネコン・大企業献金が指摘されるなかで、政治や行政が企業献金の力によって動かされていることが、重大な社会問題となっています。企業・団体献金を一掃することは国の政治に民主主義をとりもどす大前提となっています。国民の税金を政党が山分けする政党助成金制度や金の力で政治をゆがめる企業・団体献金にたいしてこれまでにもまして、国民からきびしい批判の声が上がっているのは当然です。

 日本共産党は財政的な基盤も国民とともにきずく、「国民が主人公」の政党という立場を政治資金でもつらぬき、国民のみなさんとともに政治を国民の手にとりもどすたたかいのなかで、政党助成金や企業・団体献金の廃止のためにいっそう努力する決意です。


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